眼鏡越しの風景EP52-三人-

「女性が三人寄ると姦しい(かしましい)」
とはよく言ったもので、書いて字のごとく三人集まるとわちゃわちゃ楽しい。

学生の頃、私は休み時間に示し合わせ、連れ立ってトイレに行くタイプではなかった。それでも、奇数構成の女子グループというのは少々バランスが難しく、女子の暗黙のルールはなかなか厄介だと思っていた。特に学校行事の遠足や修学旅行、バスや新幹線の座席が二人並びのときは誰がどこに座るかと、奇数がゆえに漂うグループ分けの微妙な空気を何度か感じることもあった。そのうち、女子たちは空気を読む力を身に付け、グループ構成を割り切れる偶数にすることで危機を回避するようになっていった。

大人になった今は、年齢、性別関係なく、誰と付き合うかの方が重要となり、その集まりが奇数か偶数かと意識することもなくなった。ここ最近は奇数の中でも“三人”という人数構成が理にかなっていて気に入っている。例えば一人が落ち込んでいたとして、1対1だと落ち込んでいる側のネガティブな感情に引きずられ、助けようとした自分も負の海で溺れる危険がある。これが三人だとどうだろう、内二人はたいてい元気、落ち込んでいる一人の話を元気モードの二人が聞くのでネガティブな空気になりにくい。「うんうん」と、ただ話を聞くだけの時もあれば、相談にのり助言を求められれば、自分の意見を言う時もある。その時々の元気担当二人の多角的に物事を捉えた意見も加わり、選択肢は増えるが、決して意見が出過ぎてまとまらないということもなく、三人はちょうどいいコンパクトさなのだ。更には三人で話している間に、悩んでいる本人が考えを整理し、その理由を俯瞰出来ることの効果も大きい。それまで一人で複雑に考えていたことが、実はすごくシンプルな答えだったと気づくこともある。さすがに三人全員が同時に落ち込み、もうここに救世主はいないという状況には今までなっておらず、誰かひとりは必ず、「大丈夫!」「なるようになるさ!」と言える人が存在するのもいいところだ。

諺や歴史、四字熟語と、古来の教えによると、
「三人寄れば文殊の知恵」
「三本の矢」
「三位一体」
など、困難に立ち向かうよう力を合わせる意味の言葉にはよく「三」とう数字が使われている。これは私が考える「すべてにおいてちょうどイイ最大公約人数」に通じているのかもしれない。そんな分析魔の私の持論はさておき、この「三」という数字は、日常のどうでもいいことにも効力を発揮する。
一人でお買い物中、優柔不断炸裂、どっちの色にするか、どっちのデザインにするかと迷って決められない場面にも、友だちに助けを求める。三人なら多数決をしても、満場一致か、2対1のどちらかなので非常に分かりやすい。
旅行に出かけた時もそうだ、睡魔に襲われ車の後部座席でウトウト、会話が途切れしまっても、残りの二人がお喋りを続けてくれるのでその場がシーンとなることもなく、気兼ねなく誰かはウトウト出来る。朝、ホテルの隣部屋のドアをいくらノックしても起きてこず寝坊した私、予定時間の朝食ビュッフェに間に合わず「ごめん!先に行ってて~」と、二人に先に行ってもらい、私はなんとか出発時間に間に合った。電車を乗り間違え、一人どこか遠くの県に行ってしまい大遅刻してしまった時も、二人でお茶をしながら一時間も待っていてくれ、その待ち時間に起こったカフェでの出来事を二人して、おもしろ可笑しく話してくれた。私が平謝りする場面のはずが、あまりに二人が楽しそうに笑っているので、拍子抜けしてこちらも思わず笑ってしまった。

楽しいことは3倍、面白いことは無限大、落ち込んだ時は3等分。もちろん四人以上や大勢も楽しくて好きだけれど、相手にしっかり向き合いたい時、「三」は最小最強の人数なのかもしれない。

今日も朝から「今度買う、アウトドア用テーブルを何色にしようかなぁ~?」と呟けば、満場一致で「秋色!ブラウンで!」と。

「私、スコーン焼いてくー!」
「じゃあ私、美味しい珈琲いれるね~」と、
そのあとも元気な返事が返ってきた。

♪My Favorite Song
サンキュ.  DREAMS COME TRUE

yukko

投稿者プロフィール

眼鏡と帽子がトレードマークのボーカル yukkoです。

邦楽カバーとオリジナル、ピアノ&ウクレレ弾き語り
新開地音楽祭やラジオ出演等 神戸を拠点に活動中。

作詞やエッセイ、言葉を調べたり、書きものが好き。

眼鏡越しの風景を、徒然なるままに…。

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